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はじめに

昔の抵当権が不動産に残っていると、たとえ効力はなくなっていたとしても、自動で消えるわけではありません。抵当権抹消登記をしない限り、登記簿には残ったままになってしまいます。

抵当権抹消登記をせずに放置してしまっていると、その不動産を売却や再び担保に入れてお金を借りたいと思ったときには、抵当権抹消登記を行うことが必要になります。

そのような事態にならないためにも、休眠担保権(昔の抵当権・根抵当権・質権など)を抹消することをおすすめします。

休眠担保権とは

明治、大正、昭和初期などの、戦前に設定され長年放置されている昔の抵当権や古い担保権(抵当権・根抵当権・質権等)で、抵当権者と連絡が取れずに抹消されず、休眠状態にある担保権のことをいいます。

借金等の債権は完済したにも関わらず、抵当権設定登記を抹消するのを忘れてそのまま何十年も放置してしまったという場合がほとんどです。

なお金融機関などの一般的な住宅ローンについて完済された場合、金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類が送られてきます。抵当権抹消登記は申請をしないといつまでたっても消されません。すぐに手続きすれば、「早く」「安く」手続きできますので、ささっと済ませてしまうことをおすすめします。

⇒住宅ローンを完済された方へ【抵当権抹消登記について】詳しくはこちら

休眠抵当権抹消登記手続きのパターン


抵当権者が分かる場合

抵当権者またはその相続人全員(またはその承継会社)と連絡をとることができ、かつその方たちに抵当権抹消登記手続きに協力してもらえる場合は、通常通り不動産の所有者と共同して抵当権抹消登記を申請することになります。

なお、抵当権抹消登記の前提として、相続による抵当権の移転登記が必要になることがあります。

ただし、相続人のうち連絡がとれない人がいたり、手続きに協力できない人がいる場合には、この方法だけで抵当権抹消登記を申請することはできません。

そして、抵当権者が見つからないと抵当権が抹消できないということになると、抵当権をいつまでも抹消できない事態になってしまいます。そこで、条件を満たすと不動産の所有者のみの単独で抵当権を抹消できる規定があります。


完済した証明書がない場合

領収書等の債権を完済しましたという証明書がない場合です。かなり昔の抵当権であれば、ほとんどがこのケースだと思われます。

登記簿に載っている抵当権者について分からず、完済した証明書がない場合は、下記の3つの条件がそろっていれば、不動産の所有者が単独で抵当権を抹消できるように規定された特例があります。(不動産登記法第70条第3項後段)

① 抵当権者が行方不明であること
抵当権者がどこにいるのかを不動産の所有者が知らないというだけでは足りず、不在籍不在住証明書を取得したり、郵便物を郵送したけど「あて所にたずねあたりません」で返送されてきた封筒等、一定程度の調査はしたが抵当権者の所在が分からなかったという証拠を添付する必要があります。

なお相続人がいることが判明した場合には、それを行方不明としてこの特例を利用することはできません。

② 弁済期から20年以上経過していること
過去の登記簿を調査して、弁済期が登記されていれば、弁済期から20年以上経過しているかどうかは判断することができます。弁済期が登記されておらず、弁済期が分からない場合は、債権成立の日(契約の日)を弁済期としたり、借用書や申述書を管轄の法務局に提出して、弁済期を判断してもらうこととなります。

③ 登記された債権額及び利息・遅延損害金の全額を供託すること
登記された債権額と、供託する日までの利息・遅延損害金を計算して、供託所(法務局)に供託します。「供託」とは、供託所に金銭を提出することで、法律上支払ったことにするための制度です。

登記簿に記載された債権額だけでなく、利息・遅延損害金の全額ということで、供託する金額について気になると思います。しかし、明治や大正に設定された休眠抵当権の債権額は、数円から数百円程度ですので、利息や損害金を含めても数百円、数千円程度です。(現在の貨幣価値に換算する必要はありません)


完済した証明書がある場合

完済した証明書がある場合は、下記の2つの条件がそろっていれば、不動産の所有者が単独で抵当権を抹消できるように規定された特例があります。(不動産登記法第70条第3項前段)

① 抵当権者が行方不明であること
これは上記の完済した証明書がない場合と同様に、抵当権者がどこにいるのかを不動産の所有者が知らないというだけでは足りず、不在籍不在住証明書を取得したり、郵便物を郵送したけど「あて所にたずねあたりません」で返送されてきた封筒等、一定程度の調査はしたが抵当権者の所在が分からなかったという証拠を添付する必要があります。

なお相続人がいることが判明した場合には、それを行方不明としてこの特例を利用することはできません。

② 債権証書(契約書等)及び弁済証書(領収書等)があること
当時の契約書と領収書があれば、完済している可能性が極めて高いためです。完済はしたが、抵当権の抹消登記を申請しないうちに、抵当権者が行方不明になってしまったという場合です。

しかし実際には、かなり昔の抵当権なので、このような書類が残っていることはまれだと思われます。そのため、利用されることはあまりなく、上記の完済した証明書がない場合の特例の手続きによって進めていくことがほとんどです。

完済した証明書がある場合は、公示催告による除権決定を利用した抵当権抹消(不動産登記法第70条第1項・第2項)の特例が可能な場合もありますが、現実には利用しにくいものとして、あまり活用されていないのでここでは省略します。


休眠抵当権の特例が使えない場合

上記の各条件に該当すれば、特例を使って不動産の所有者が単独で抵当権を抹消できますが、下記のような場合には、裁判による抵当権抹消を検討することになります。

① 抵当権者(またはその相続人)が行方不明ではない
一定程度の調査をした上で、抵当権者またはその相続人の方の住所などが明らかになった場合、特例は使えないことになります。また数次相続が発生して相続人が多数になると、全員に任意に協力してもらい、通常通り不動産の所有者と共同して抵当権抹消登記を申請するというのが難しくなります。

② 弁済期から20年を経過していない
弁済期から20年以上経過していないと特例は使えません。もう少しで20年が経過するような場合、20年経過するのを待ってから特例を使って抹消するのを検討することも可能です。

③ 登記された債権額が高額である
特例を使える条件を満たしていても、登記された債権額が数百万、数千万と高額である場合、事実上供託するのが難しいと思われます。

以上の場合は、裁判による抵当権抹消を行うことになります。抵当権者またはその相続人全員を相手に、抵当権抹消請求訴訟を提起し、裁判に勝訴し判決が確定すると、不動産の所有者が単独で抵当権抹消登記を申請することができます。

登記手続きに協力してもらえない人のみを被告にして裁判を行う事は可能ですが、裁判はある程度の時間がかかりますし、その間に協力してもらえる人の気持ちが変わる可能性もあります。また協力しない人に対しては裁判、協力する人とは通常通り不動産の所有者と共同して抵当権抹消登記を申請するというのは、相続人の人数が多いと事務的に難しくなります。

そのため、登記手続きに協力する人にも十分な説明をして、全員を被告にして裁判を行う方が手続き的にも困難さが少ないと考えます。

ただし数次相続が発生して戸籍謄本等を取得する数が多くなることや、裁判の予納郵券などがあるので、供託による抹消登記と比べて、数倍費用が高くなります。

手続にかかる期間と費用

通常の住宅ローンを完済した場合の抵当権の抹消に比べて、手間も時間もかかります。何事も問題がなければ1か月~3か月で手続きが終わることがほとんどですが、特例が使えず裁判による抵当権抹消を行った場合、1年以上もかかることもあります。


休眠抵当権抹消登記(供託による抹消登記)の費用

基本報酬=110,000円(税込)~

※1 この報酬は、不動産の個数(筆数)1を想定しています。2個目以降については1個につき1,100円(税込)を加算させていただきます。

※2 抵当権者の人数が複数名の場合は、別途加算させていただきます。

※3 供託による休眠抵当権の抹消登記以外の場合は、お話を伺った上でお見積りをいたします。

基本的な報酬以外に実費がかかります。

  • 登録免許税=1,000円×物件数(物件数が20件を超える場合は20,000円)
  • 供託金(債権額によって異なります)
  • その他、登記事項証明書(登記簿謄本)、郵送料など

※ 抵当権抹消登記に至るまでの抵当権者の調査費用等の実費につきましては、実際に着手してみないと分かりません。

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最終更新日 2023年10月28日