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残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。|民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号。平成30年7月6日成立。)のうち、残された配偶者の居住権を保護するための方策に関する部分が、令和2年4月1日に施行されます。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00028.html

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、賃料の負担なく無償で、その建物に住み続けることができる権利です。

これは、建物についての権利を「自宅を持つ権利(負担付きの所有権)」と「住む権利(配偶者居住権)」に分け、遺産分割の際などに、残された配偶者が「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することができるようにしたものです。

一般的には、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者は、これまで住んでいた自宅に生活を続けたいと希望することが多いと考えられます。そこで、残された配偶者を手厚く保護するために、遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者が無償で住み慣れた住居に居住することができる権利を新設したのです。

配偶者居住権は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権とは異なり、人に売ったり、自由に貸したりすることができないため、所有権をそのまま相続する場合と比べて評価額が低額になります。

その分、遺言や遺産分割の際、配偶者が配偶者居住権を取得することによって、老後の生活資金として預貯金などのその他の遺産をより多く取得することができるというメリットがあります。

このため、残された配偶者は、住み慣れた住居を終身または一定期間、無償で使いながら、預貯金などの他の財産もより多く取得できるようになり、その後の生活の安定を図ることができます。

次の図の例から解説します。

法務省の配偶者居住権の評価方式の一例より

【例】相続人が妻と子1人、遺産が自宅(2,000万円)と預貯金3,000万円だった場合
妻と子の相続分=1:1 (妻2,500万円、子2,500万円)

【従来または配偶者居住権を利用しない場合】
妻が相続する財産 ⇒ 自宅(2,000万円)+預貯金500万円
子が相続する財産 ⇒ 預貯金2,500万円

ちょうど2,500万円ずつ分けようとする場合には、妻が自宅に住み続けることを前提として自宅を、子供は預金をという分け方になります。この分け方だと、預貯金は500万円しか相続することができません。これでは、住む場所はあっても妻の老後の生活が成り立たなくなってしまう恐れがあります。

もっと大変なケースだと、財産が自宅4,000万円、預金が1,000万円、合計5,000万円の場合、法定相続分で相続しようとすると、2,500万円ずつ分けようとすると、預金は1,000万円しかないため、子供に残りの1,500万円を相続させるためには、自宅を売却せざるを得ないこともあり得ます。

【配偶者居住権を利用する場合】
妻が相続する財産 ⇒ 配偶者居住権(1,000万円)+預貯金1,500万円
子が相続する財産 ⇒ 負担付き所有権(1,000万円)+預貯金1,500万円
※配偶者居住権1,000万円は仮の価格です。

このように相続すれば、妻は自宅に住み続けることができるし、老後の生活費として1,500万円の預貯金を取得することができるため、安心して生活することができます。

配偶者居住権の簡易な評価方法については次の図になります。国税庁のホームページ等に評価額について、詳細な計算の方法が記載されていますが、こちらでは省略させていただきます。

法務省の配偶者居住権の評価方式の一例より

配偶者居住権が成立するには

基本的要件は、亡くなられた方の配偶者が、相続開始の時に相続財産である建物に居住していたことが必要です。

そのうえで次のいずれかの要件に該当することが必要です。

  • 遺産分割協議により配偶者居住権を取得した
  • 遺言により配偶者居住権を取得した
  • 死因贈与により配偶者居住権を取得した
  • 家庭裁判所が配偶者居住権の取得を定めた

ただし、亡くなられた方が建物を配偶者以外の人と共有していたときは、配偶者居住権は成立しません。「共有」とは、「亡くなられた方の持分2分の1、Aさんの持分2分の1」のように、配偶者ではないAさんの名義が入っていることです。

配偶者長期居住権の主な特徴

  • 原則として終身、つまり配偶者が亡くなるまで
  • 無償、つまり家賃等を支払う必要はありません
  • 譲渡することができない
  • 相続させることはできない

期間については「存続期間 年月日から何年(または年月日から年月日まで)」のように、遺産分割協議や遺言、死因贈与の中で定めがあるとき、または家庭裁判所が定めたときは、そのときまでになります。

なお、配偶者居住権の存続期間が定められた場合には、その延長や更新をすることはできません。

配偶者居住権は誰かにあげることはできません。ただし、所有者の承諾を得れば、第三者(他人)に貸したりして賃料をもらうことができます。

そして配偶者居住権は配偶者の死亡したときは消滅するため、相続させることはできません。

配偶者居住権は設定の登記が必要

配偶者が配偶者居住権を第三者(他人)に主張するためには、設定の登記をする必要があります。

配偶者居住権の設定の登記の申請は、建物の所有者を登記義務者とし、配偶者を登記権利者とする共同で申請する必要があります。

その前提として、亡くなられた方が所有権の登記名義人である建物について、相続や遺贈を原因とする所有権の移転の登記がされている必要があるのです。

配偶者居住権の設定の登記にかかる登録免許税は、建物の固定資産税評価額×0.2%です。
手続きが難しい場合は、登記の専門家である司法書士にご相談ください。

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最終更新日 2020年5月21日