遺言に誰がどの財産を引き継ぐかを書いておくことで、財産を引き継ぐに当たって、故人の意思に沿って遺産を分けられ、相続人全員で遺産分割協議ができない場合でも、相続手続きを進めることができます。
また「付言事項」として、家族に伝えるメッセージを書き、残されたご家族に気持ちを伝えることができます。それによって遺産をめぐって相続人の間での争い(争族)を回避できたり、相続が円滑に進む効果も期待できます。
公正証書遺言と自筆証書遺言、どちらを選びますか?
選ぶの際の判断材料となるそれぞれの特徴をご紹介させていただきます。
公正証書遺言は、公証役場の公証人により作成されます。メリットは次のような点です。
などです。安全・確実で、遺言の効力をめぐる将来の紛争を防止するという面においても望ましい方法といえます。
その一方で、デメリットは次のような点です。
このように、公正証書遺言は手間とお金がかかるので、思いついたらすぐに作成するということはできません。
なお証人を司法書士などの資格者に依頼すると、職務上の守秘義務がありますので、証人以外の人に知られることはまずありません。当事務所でもご依頼いただきましたら、よろこんでお引き受けいたします。
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作成する遺言のことです。メリットは次のような点です。
などです。筆記具と紙さえあれば、費用も掛からず手軽にいつでも作成可能です。
一方、デメリットは次のような点です。
などです。なお検認の手続きとは、
ことによって、遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きです。その遺言書の「内容」が有効か無効かを判断するための手続きではありません。
自筆証書遺言の場合、手軽に作成できる反面、専門家が関与していないため、民法で定められた要件を守っていなければ無効となってしまう可能性があります。また、法律上有効であっても、財産の特定が不十分であったり、財産をあげたい人が特定されていなかったりなどで、手続き上において利用できないという危険性もあります。
また法的に有効な遺言書は、遺言の際に、遺言能力が必要であり、遺言無能力者の書いた遺言は無効となります。ご高齢の方の自筆証書遺言の場合、作成時に証人が不要で、遺言者一人で書くことができるため、遺言者が亡くなった後、「遺言書を書いたとき、遺言者はすでに認知症だった」といって遺言書の無効を訴え、遺産をめぐって相続人の間での争い(争族)の火種にになるおそれもあります。
また令和2年7月10日(金)からは、自筆証書遺言の保管制度が始まりました。
この保管制度を利用している場合は、自筆証書遺言であっても家庭裁判所での検認の手続きを省略できます。
時間と手間がかかる検認の手続きを省略できることが、この保管制度を利用する最大のメリットですが、実は落とし穴があります。
遺言書保管官は、保管の申請にかかる遺言書について、「形式的」に有効か無効かの確認の審査を行うだけで、その遺言書の「内容」が有効か無効かを判断して受付する訳ではないのです。
なお公正証書遺言の検索システムと同様に、法務局(遺言書保管所)において相続人や利害関係人(受遺者・遺言執行者など)が検索・照会することができます。なお遺言者の存命中は、遺言者本人以外は検索することができません。
遺言者が亡くなられている場合は、相続人や利害関係人(受遺者・遺言執行者など)は、全国どこの遺言書保管所においても、
の交付を請求することができます。なお相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けると、遺言書保管官はその方以外の相続人等に対して、遺言書を保管している旨を通知します。
また遺言書の閲覧については、モニターによる遺言書の画像等の閲覧は、全国どこの遺言書保管所においてもできますが、遺言書原本の閲覧については、原本が保管されている遺言保管所にのみ閲覧の請求をすることができます。
法務局における自筆証書遺言の保管制度は、公正証書遺言に比べて、実費は大変安くなりますが、遺言者が亡くなられた際の遺言書情報証明書(1通につき1,400円)の交付請求に、
が必要になります。これは家庭裁判所での検認を申し立てる際に必要となるものと大差がなく、手間自体はほとんど変わっていません。
それに対して公正証書遺言は、遺言作成段階で正本及び謄本が渡されるので、遺言書の受領は不要となります。(再発行は可能)
また自筆証書遺言の場合、法律の要件を満たさないために無効となることもあり得ます。それに対して公正証書遺言は、遺言が無効となる可能性は低いので、当事務所では遺言をお考えの方には、公正証書遺言をおすすめしています。
遺言書案の作成から公証役場との事前打ち合わせまでの手続き、また証人の手配についても、ぜひお気軽に司法書士にご相談ください。
最終更新日 2020年9月18日