遺言は大きく分けて「普通方式」と「特別方式」があります。
「普通方式」の遺言は、
1.自筆証書遺言
2.公正証書遺言
3.秘密証書遺言
の3種類があります。
「特別方式」の遺言は、
1.死亡の危急に迫った者の遺言
2.伝染病隔離者の遺言
3.在船者の遺言
4.船舶遭難者の遺言
の4種類があります。
「特別方式」は、「普通方式」の要式に従うことができない場合に要件を緩和した、特別な状況にある人のために設けられたものですので、ここでは、一般的な「普通方式」の3種類をご紹介していきます。
目次
自筆証書遺言とは、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作成する遺言のことです。
筆記具と紙さえあれば、他の方式と比べると費用がかからず、いつでも書くことができ、手続きも一番簡単です。
しかし、その反面、民法で定められた要件を守っていなければ無効となってしまう可能性があります。また、法律上有効であっても、財産の特定が不十分であったり、財産をあげたい人が特定されていなかったりなどで、手続き上において利用できないという危険性もあります。
したがって不安がある方は、専門家に相談した上で作成されることをおすすめします。
また、自筆証書遺言の場合は、下記の公正証書遺言と異なり、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所での検認の手続きをしなければなりません。
検認の手続きとは、
ことによって、遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きです。そのため遺言を執行するまでに手間と時間がかかります。
また、自筆証書遺言を書いた後は、紛失や天災の危険性もあるので、保管方法を考える必要があります。そして、自筆証書遺言の存在をどのように相続人に知らせるかという問題もありますので、遺言を書いたことを伝えておくことも必要です。
なお、平成31年1月13日より、財産目録の部分についてはパソコンで作成して印刷したものや、ほかの人に代筆してもらったものでもよくなりました。
自筆証書遺言に「パソコン等で作成した財産目録」を添付したり、または、「銀行預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書」を添付することにより遺言書を作成できるようになったのです。
具体的には、民法968条第2項において「自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない」と規定されました。
ただし、この財産目録については、「全てのページにに署名し、印を押さなければならない」とされています(財産目録を両面印刷したときは、両面に署名押印が必要)。
注意点としては、条文上「財産目録を添付する場合」とありますので、「自書による遺言書本文」と「自書によらない財産目録」とは、別の用紙に書く必要があります。
さらに令和2年7月10日(金)からは、自筆証書遺言の保管制度が始まりました。
この保管制度を利用している場合は、自筆証書遺言であっても家庭裁判所での検認の手続きを省略できます。
こちらも公正証書遺言の検索システムと同様に、法務局(遺言書保管所)において相続人や利害関係人(受遺者・遺言執行者など)が検索・照会することができます。なお遺言者の存命中は、遺言者本人以外は検索することができません。
遺言者が亡くなられている場合は、相続人や利害関係人(受遺者・遺言執行者など)は、全国どこの遺言書保管所においても、
の交付を請求することができます。なお相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けると、遺言書保管官はその方以外の相続人等に対して、遺言書を保管している旨を通知します。
また遺言書の閲覧については、モニターによる遺言書の画像等の閲覧は、全国どこの遺言書保管所においてもできますが、遺言書原本の閲覧については、原本が保管されている遺言保管所にのみ閲覧の請求をすることができます。
公正証書遺言は、公証役場の公証人により作成されます。そして作成した遺言書の原本は、公証役場で保管されるので、偽造や紛失の心配がなく遺言の中で最も確実な遺言の方法です。
また、自筆証書遺言と異なり、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所での検認の手続きが不要になります。ただし、公証人費用(手数料)がかかること、2名の証人の立会いが必要なことなどのデメリットもあります。
自筆証書遺言のように法律の要件を満たさないために無効となることと比較し、公正証書遺言は、遺言の中で最も高い確立で執行してもらえるものなので、遺言をお考えの方には、公正証書遺言をお勧めしています。
遺言書案の作成から公証役場との事前打ち合わせまでの手続き、また証人の手配についても、ぜひお気軽に司法書士にご相談ください。
秘密証書遺言は、遺言者が遺言を作成し、その遺言書に署名・押印をします。その遺言を封筒に入れ、遺言で用いた印で封印をし、公証役場に持参します。その際、遺言者は遺言書の証人になってもらう人を2人以上用意します。
自筆証書遺言と異なるのは、秘密証書遺言は署名だけを自書していれば、遺言書の本文は手書きである必要はなく、ワープロで作成しても構いません。
また、公証人および証人2人以上の立会により作成しますが、遺言の内容は公証人の関与しませんから、自筆証書遺言と同じく、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所での検認の手続きをしなければなりません。なお秘密証書遺言の費用は定額で、11,000円です。
遺言書の存在が明らかになることや、偽造の防止などがメリットと言えますが、自筆証書遺言に比べて法律上の有効性が高くなる訳ではありません。
現在までの法改正により、秘密証書遺言を利用する利点が失われたため、あまり選択されることのない遺言方法です。
最終更新日 2020年7月22日